費用対効果の説明
午前中の期末テストを済ませてから,新幹線にとびのり文科省のビルへ向かった。昨年度までの2年間に国立教育政策研究所の公募型研究に採択されていたプロジェクト研究に関して,成果報告会でプレゼンすることが今回のミッションだ。2年間の総額で200万円余りの助成金を受けたから,それに見合う実績を説得力を持って公表することが私に期待されていた。既に報告書の冊子は提出済みだから,それを要領よくまとめればいいはずだけれど,予定されていた30分の発表と30分の質疑応答にたえるだけの中身を配付資料として準備するためには,それなりにプレゼン向けの資料を再構成する必要があった。またしても徹夜になってしまったが,発表後に事務部局から(お世辞かも知れないが)好意的に評価されたので,帰りの新幹線で気分よく(*^_^*)この記事を書き始めた。
指定時刻に第一特別会議室に通され,国立教育政策研究所の所長さん以下各部の研究官30名ほどの聴衆の前で,「過疎地域の実情に即した小中一貫校づくりと教育課程の開発」の研究成果を発表した。私の研究手法は,文献のレビューや研究室でのシミュレーションより前に,基本的に現場に足を運び,教育実践の当事者たちと共に悩みながら問題解決に取り組んで行くパターンだから,当初の計画通りには研究が進まないことが多いし,あえて挑戦的にトライすることがあるため,「費用対効果」を数字で説明することに難しさがある。税金の使い途として妥当かどうかを常に頭に置きながらムダのない予算執行を心がけはするものの,研究目的・目標に対する達成率をあげるために無難な研究をすることにはあまり興味が無いから,結果的に「成果発表会」という場では謝る場面もあるのが私流だ。
短期的に数値で示せるようなたぐいのものばかりをエビデンスとして発表し,長い時間をかけて培われるはずのものや,数値になりにくい人々の満足度や同僚性の向上などを“二の次”にする教育研究って,いったい誰のための研究なんだろうと思うことがある。子どもたちの中に育まれるものを,そう簡単にアンケート調査で測定されてたまるか!などと叫びたくなるような「成果発表」にもしばしば出会う。
「費用対効果」という分析枠は,納税者からみれば正当性をもつ観点ではあるけれども,度が過ぎると教育実践を劣化・退化・保守化させていく危険性もはらんでいる。私たちは事後に受けるチェックや想定される説明責任を意識した仕事に偏ることなく,地域社会のために,未来の教育のために求められる仕事に汗を流したいものだ。
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