伏木久始研究室 http://fusegi.cafe.coocan.jp/

« 要約筆記者養成講座 | トップページ | 仕事をしない「子どもの日」 »

2013年4月30日 (火)

「体罰に係る実態把握調査」結果

 午後の空き時間に,研究室に地元テレビ局SBC信越放送の取材陣が来られた。今日11:00に県庁で報道関係者向けに発表された「体罰実態調査」について,教育学者としての見解をニュース番組に使いたいとの依頼だった。文科省の調査とは別に,長野県教育委員会は独自にさらに丁寧な調査を実施しているが,その平成24年度の結果がプレリリースとして配付された。その資料によれば,教職員及び部活動外部コーチ等による体罰については,平成24年度だけで2,117件の情報提供があり,それを教育委員会が個別の時案ごとに精査した結果,計54件の体罰を確認したということだった。平成23年度以前の実態調査に関しては5月下旬に追加公表するという。
 ところで…取材のほうは記者とカメラマンのリクエストに応じてインタビューに答える形式で協力した。体罰の実態が明らかになったことで学校現場は深刻に受け止めることになること,子どもたちや保護者からの「体罰」の情報提供数と教職員の報告数に大きな開きがあったことの意味を慎重に検討すべきこと,子どもたちからの報告数よりも保護者からの報告数の方が多かった結果の意味を読み取る必要があること…などを指摘した後で,市町村別に一覧表になって公表されたプレリリースをランキング的に報道したり,学校を取り巻く地域や家庭の状況を無視して学校を糾弾するかのような報道は避けるべきだとも進言した。この調査をきっかけに,学校の教職員と保護者と児童生徒が“人権”について共に考え合い,日本も批准している「子どもの権利条約」にかなう社会風土を醸成していくべきだという趣旨の話をした。
 夕方18:15。ゼミが長引いたため,演習室にタブレットPCを持ち込んでゼミ生みんなで報道番組を観ることにした。毎度のことだけれど30分の取材が十数秒に編集されていた。
 「ここかあ…」とつぶやいてしまった。どの部分の話が採用されたのか気になっていたけれど,私の発言の真意を損ねてはいなかったのでホットした。

 心配していたことだけれど,文科省の体罰調査の報道がセンセーショナルになされた以降は,残念なことに中学校や高校の教師たちが指導に一層の困難を抱えている。“指導が難しい生徒”たちから,「おっと体罰する気か?教育委員会に報告しようか」などの冷やかしが増えているそうだ。多くの生徒たちや教師は誠実に魅力ある学校づくりに努力している。しかし,一部の生徒と,ほんの一部の教師の中に一般社会では許されない言動をとる人物がいるのが学校だ。それを切り捨て処分していく発想ではなく,対話の努力によって信頼関係を深めていく方向へみんなで支援していきたいものだ。それには,選別から協調へ,一斉画一から責任選択へ,勝利至上主義からプロセス優先主義へ,テストのための勉強から学びたいことのための学習へと,日本の教育をシフトしていく構造的な改革が必要だろう。今回の体罰調査結果のプレリリースは,誰かを非難する材料にするのではなく,私たち一人ひとりが自分にできる1歩を踏み出すべきだというメッセージが埋め込まれていると受け止めよう。

« 要約筆記者養成講座 | トップページ | 仕事をしない「子どもの日」 »

教育」カテゴリの記事

ニュース・社会」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「体罰に係る実態把握調査」結果:

« 要約筆記者養成講座 | トップページ | 仕事をしない「子どもの日」 »