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2012年9月18日 (火)

中国の“90後”

 教科書会社の編集会議に出るため新幹線で東京に向かった。途中の駅から中国人4人が指定席に乗り込み,私を囲む座席に座った。ちょうどノートパソコンで反日デモのニュースをチェックしていたから,私の身体は少々固まった。もし,中国の電車内だったらどれだけ恐怖を感じたことだろう。中国に滞在している日本人の安否がとても気になった。
 実は私の大学でも少し前から中国からと推測されるサイバー攻撃を受けている。災害に遭った中国の人々を支援するために活躍しようとする日本人青年も襲われた。文化・芸術,スポーツ関係にも悪影響が出てきた。破壊行動や略奪を正当化するデモ活動は絶対に許せない。それでも,中国人の中にもデモに沸く人々を冷ややかに批判する声があり,ツイッターでも理性的な行動を呼びかける若者も少なくない。そういう事実を紹介せずに,暴徒化する中国人の映像を流し続けるメディアの姿勢が気になった。

 私が日中友好の民間団体に加わって中国に招聘されたのは1991年のこと。訪問した各都市で,「小皇帝」という言葉を耳にした。一人っ子政策によって両親とそれぞれの祖父母6人から可愛がられ,教育投資されて「わがまま」に育った子たちを称してそう呼んでいた。
 その後,“90後”という世代名が登場した。改革開放経済政策の成果が現れ始めた1990年代に生まれ、インターネットが普及した時代に学生時代を送った中国の若い世代は,「小皇帝」でもある上に,共産党が愛国教育を強化した時期の教育を受けている。また,反日デモが史上最悪な状況になってしまった背景には,貧富の差が拡大する国内事情に加え,高学歴であっても仕事に就けない若者たちの不満や,党幹部や高官の政治汚職への怒りも連動しているとみられる。
 今回の反日デモに対し,私たち日本国民は,決して暴徒化してはならない…そう願っていたけれど,怖れていたことが起きてしまった。中国人学校に油がまかれて火が放たれたという。それは決して愛国心ではないということを教育を通して理解させられていないということか。中国人が職場や学校で差別的待遇を受けるのではないかと心配になる。
 日本に“2012後”世代が生まれないことを期待したい。

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