那須の温泉

　日頃の親不孝の罪滅ぼしに，家族で帰省したついでに母を温泉に連れ出した。栃木県人として，風評被害に苦しむ県内のホテルに泊まろうと思い，ネットで那須の温泉宿を予約したが，自粛ムードも解消されてきたこともあってか，予想を裏切って那須エリアはゴールデンウィークの混雑で大渋滞だった。

　今朝は５時から，宿の露天風呂で私は２時間の読書タイムをとった。白濁の硫黄泉に浸かったり，湯船から出て体を外気にさらしたり…。それを何度も繰り返しながら読書を愉しんだ。こんなにゆったりと時間を使ったのは何年ぶりだったろう。

　午前中は牧場へ寄ったが，孫が動物とふれあう姿も見たいはずの母は，坂道を歩きまわることが辛いため，一人座って待つことを選んだ。私は母と二人でコーヒーを飲みながら，子どもたちのことや私自身の仕事のことなどを，今までになく丁寧に，たくさん話し続けた。栃木の実家に帰着してから，障害者施設に宿泊していた姉を迎えに行った帰り道には，中学生時代までの遊び友だちがやっている店に母も連れて行った。母親同士なんと30年以上の歳月を経ての再会だったはずだ。

　明日は長野に戻り，たまっている仕事を片付けなければならない。でも，今回の帰省は，すっかり老いた母の，満足そうな顔がみられてちょっぴり嬉しい栃木旅行となった。