ビンラディンの死
国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者(54)が殺害されたというニュースが流れた。オバマ大統領の命令を受けた米国の軍特殊部隊(SEALS)が4機のヘリコプターでビンラディン容疑者が潜伏するパキスタン国内の施設へ降下して急襲したという。ホワイトハウスでは特殊部隊の作戦行動を大統領以下政府高官がライブで見つめていたことが報道で明らかにされた。多くの米国民が「USA!」コールを連呼して熱狂する映像も流れた。遺体はイスラム教徒の慣習とは異なり、水葬したとの報道もあった。遺体の引き取り手もない上、土葬した場所がアルカイダの「聖地」とされることも警戒する必要があったからだと推測されている。本人の弁明も謝罪も主張も聞けないまま、「死人に口なし」で同時多発テロ事件は清算されるのだろうか。「9.11」の遺族はこのニュースをどう受け止めたのだろう?
アルカイダのメンバーの犯行とされたニューヨーク等での同時多発テロ事件。あの時、私は東京で小学校6年生の担任教師をしていた。高層ビルに激突した旅客機には教え子の知人もいた。イスラム教、アラブ人、中東…というだけで敵視ムード漂う事態となった。当時は、都内でもムスリムが集うモスクに理不尽に投石する輩もいた。私は子どもたちに物事を公正に判断する努力を求めたくて、サウジアラビアからの留学生2人を教室に招き、日常生活を紹介してもらった。学校では人の命は奪ってはいけないと教える。異文化を尊重し、多様性を受け入れる国際理解教育も勧められてきた。一方で、一人を殺害したことが賞賛される現実もある。
親米派の独裁政権が民主化のうねりで次々に崩壊する情勢を迎えているアラブ諸国では、暴力に頼るアルカイダ勢力が今後拡大することは考えにくい。しかし、今回の殺害事件は新たな「復讐」や「報復」の種子をばらまくことにはならないか、やや懸念される。3年前のニューヨーク出張の際に「グランド・ゼロ」をみたとき、事件の映像の記憶と重ね合わせて犠牲者の実態をイメージして苦しくなったことが忘れられない。言いようのない怒りもこみ上げてきた。それでも、テロに巻き込まれた遺族の多様な声に耳を傾け、特定のイデオロギーや文化・伝統を超えて、それぞれの「遺族」の思いを重ね合わせることから解決の手段を考えていくことが、報復の連鎖を断ち切るためには重要な気がする。
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