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2010年12月11日 (土)

PISA成人版

 10日は国立オリンピック青少年総合センターでPISA2009のレビューをテーマとする研究者の集会に参加した。PISAが各国の教育にどのような影響をもたらしたのかを分析し、日本は今後PISAとどのように向き合っていけばよいのかを議論する貴重な勉強会となった。そこでも話題になったが、日本の義務教育終了段階の生徒に、市民性とか、感性とかをテーマにした問題が仮にできたとしたら、これまでのような成績がとれるのかどうか?かなりあやしいだろう。

 ところが、長野に戻る新幹線車内の文字ニュースに驚かされた。なんと、OECDは、「成人が社会で必要とされる能力」を測定する初の「国際成人力調査(PIAAC)」を2011年に実施する予定であるという。無作為に選んだ成人宅を訪問して調査を行うそうだ。帰宅後にさっそく調べてみたら、日本もPISA同様に、国立教育政策研究所が中心となって調査に参加する予定らしい。すでに予備調査が行われたようだが、来年の7月頃には本調査が行われることになる。こうなると、テスト対策や入試勉強に偏ってきた日本を含む東アジア型の教育の欠陥が浮き彫りにされるのではないだろうか。

 しかし、OECDは国際経済を活性化させるための機構であって、経済発展には必ずしも結びつかないタイプの教育実践にどこまで着目できるのかは疑問だ。政治や経済から独立した「教育の独自性」も尊重されるべきだと思うし、それは私たち教育学者の存在価値にも関わってくる。OECDは、PIAACの結果を分析して、成人に必要な「社会対応能力」の要素と学校教育との関係を「大人の学力」として説明していくことになるだろう。4回目を終えたPISAが、参加する国や地域の国際的な点取り競争の様相を呈し始めた今、その本来の主旨を再確認するためにも、新規に導入されるPIAACが適切な方法で実施され、妥当な結果分析と処方箋を提出する調査となることを期待したい。

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