育児休業の実態
昨日,厚生労働省が2009年度の雇用均等基本調査の結果を発表した。それによると,民間企業で働く女性のうち,2008年度に出産して育児休業を取得した人の割合が85.6%にとどまり,前年度比で5.0%減ったという。景気の悪化で育児休業をとらずに働く例が増えているのではないかと同省は説明している。一方,育児休業を取得した男性はわずかながら増え,1.72%となって過去最大となったらしい。そもそも育児休業制度は,1992年の育児休業法が施行されたことで,子育てのために仕事を休むことが法律上で認められたものだが,私は一度も使わないまま育児をサボって過ごしてしまった。
現在では「育児・介護休業法」と改められ,2009年度の改正で3歳までのこどもを持つ従業員に対しては,1日6時間の短時間勤務制度を設けることを事業主に義務づけている。しかし,日本ではまだ育児休業制度の規定を設けていない事業所が全体の3割程度あり,育児休業を取得できる期間も,その大半が「1歳6ヶ月」という法定通りの最低基準でしかない。こういうニュースを聞くたびに,この国は子どもを大事にしていく発想が乏しいと感じてしまう。
ちょうど明日の講演の話題に出すデンマークでは,自治体が0歳から2歳までの乳児保育,3歳から5歳までの幼児保育,学童児3年生までの学童保育,4年生以上9年生までの青少年クラブのそれぞれの施設を完備しているが,親が仕事から戻るまで,預けられた子どもは保育士や生活指導員や他の子どもたちと一緒に孤独になることなく過ごしている。その上で,夫婦が計画して産休と育休を上手に使いこなしている。
例えば,26週間の産休をとる妻に合わせて,出産後14週間の父親産休をとる夫は珍しくないが,デンマークの育児制度の特徴は,産休・育休を年間5週間の有給休暇と組み合わせたり,育児休業を半日ごとに切り分けて夫婦でフレックスタイム的に時間を設定したりできる自由度があることだ。子どもが生まれてからの家族の過ごし方を自分たちで考え,工夫できる点はいかにもデンマークらしい。また,この国では男性も家事を積極的にこなすが,乳幼児を乳母車に乗せた父親たちが集うサークル・スペースもたくさんある。こうした子育て環境への社会整備がデンマークの出生率を引き上げたわけだ。
日本では学校の保護者会ですら,父親の参加は希少であって,なかには父親が隅に参加していても,「お母様方,本日は…」などと挨拶する担任教師もいて,肩身が狭い思いをした経験のある父親は少なくないだろう。どこから手を着ければよいのかわからないほど育児をめぐる社会環境は課題が多いが,身近なところからできることを始めてみよう。
社会から大事にされてきたと思えた子は,きっと社会に貢献しようと意欲するのだと思う。北欧の子どもたちにインタビューするたびに,私はそう感じてきた。親に大事にされたと実感している子が親を大切にするように,地域を愛する子に育てたかったら,地域のみんなで子どもを育てていく必要がある。愛国心を持たせたかったら,国はもっと子育て支援に力を入れなければ,子どもたちが大人になっても,まともな有権者にはなり得ない…と,厳しい時代を生きる若者たちの将来を危惧するこの頃だ。
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