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2010年6月12日 (土)

南アでのワールドカップ

 ついに2010・FIFAサッカー・ワールドカップが開幕した。初のアフリカでの開催にいろいろな意義があるが,現行の学習指導要領下でアフリカ大陸の実情を学校ではほとんど学ばずに卒業した日本の若者にとって,世界を知る良い機会でもある。また,ワールドカップ大会を通じて各国の選手団と地元の人々が直接にふれあえるチャンスを持てるのも大きな魅力だろう。韓国-日本共同開催の時にカメルーンチームの合宿地となった大分県の中津江村に代表されるように,日本選手以上にその外国チーム選手に愛着を持ち,世界と繋がる経験をもつ人々が増えることも,この大会がもたらす国際交流の「よさ」だと思う。また,今大会1次リーグA組初戦のウルグアイ-フランス戦の主審を務めた西村雄一さんや副審の相楽亨さんのように,選手のみならず審判や大会役員として活躍する日本人が増えてきたことも誇らしいことだ。

 ところで,20年余り前のことになるが,私が都内の中学校で社会科教師をしていた頃,今大会の会場国となった南アフリカ共和国は,人種隔離政策(アパルトヘイト)をとっていた。その頃の日本はバブルのまっただ中で,貴金属資源の豊富な南アとの貿易額が拡大していた日本に対し,南ア政府は「名誉白人」という称号を与え特別扱いしていた時代だった。私はありとあらゆる方法で同国での人種隔離政策の実際を調べて教材をつくり,それがどれほど非人道的なものかを授業で取り上げ,日本人として本当に「名誉」なことなのか?と生徒に問いかける授業をしていた。映画『カラーパープル』や『遠い夜明け』を観て感動したのもこの頃だった。
 まもなく黒人指導者のネルソン・マンデラ氏が釈放され,黒人に初めて参政権が与えられた総選挙により,マンデラ大統領が誕生したニュースを聞いたときは自分事のように嬉しかった。私自身が色黒で,小さい頃から周囲の子どもたちに「黒人」とかわかわれ,担任教師からも「クロンボ」と言われることが多かったので,よけいに嬉しかったのかも知れない。マンデラ大統領は敢えて白人政党との連立内閣を組み,白人と黒人のSPをつけて,国民がひとつになることを願ってラグビーの第3回ワールドカップを招致し,見事に初優勝させたという伝説をつくった。

 昨日この国で開幕したサッカーのワールドカップ どんなドラマが生まれるのか楽しみだ。

 

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