出張講演の魅力
私たち大学教員も,「出前講座」をはじめ様々な機関・学校・団体等から講演依頼をいただく。先日25日には,横浜国立大学のFD合宿研修のメニューに組み込まれた講演を,今日29日は長野県東部エリアをカバーする教育事務所の依頼で,PTA連合会研究集会(PTA指導者研修会)の締めくくりの講演を担当した。私は本務である大学の授業や役職上の会議等に支障のない限り,毎月このような講演をお引き受けしているが,毎回講演の直前にはほとんど徹夜で講演資料をつくっている。ちょうど,小学校教師だった時代に研究授業の学習指導案をこだわってつくっていた作業プロセスと似ている。私にとっての講演は,一方的な情報提供型のスタイルをとっていたとしても,一回一回が「研究授業」なのだ。
国立大学法人の教職員として,公的な活動に貢献することが当然と考えていたのは最初の年くらいのもので,その後はすっかり,出張して担当させていただく講演会の魅力にはまっている。なぜか?
私は国内外のいろいろな土地を散策することが好きだった。今でも地理的野心は衰えていないものの,いかんせん散策するゆとりを失ってしまっている。ところが依頼された講演とあらば,大義名分もありカーナビに頼りながら未知の場所へと冒険ドライブが始まる。道沿いの風景や土地利用からその土地の人々の暮らしを思い描きながら,自分の世界観を鍛えていく楽しい旅となる。
おまけに,特別な用事でもなければ入ることもない△△記念ホールや▲▲生涯学習センター等の講演会場の楽屋や,学校の校長室等に直接案内される。そこで名刺交換させていただく先輩方は皆立派な方なのだが,しばしば人間的な魅力にあふれている「すごい人」にも出会う。一方,講演会を企画運営する「縁の下の力持ち」の担当者には,低姿勢ながらきわめて優秀な方が多い。日常の研究・教育活動のなかでは出会うことのない素敵な人々に接することができるだけでも,いろいろ勉強になるのだ。
それだけじゃない。特に今日の講演に動員された(笑)450名ほどのPTA関係者の聴く姿勢には感動させられた。体育館のフロアにござを敷いた客席に詰めて座るという条件で,睡魔が襲う時間帯にもかかわらず,100分の拙い講演をみごとに集中して聴いてくださった。家庭と学校が連携して志向すべき教育についての話題だったが,聴衆のレベルの高さに私の方もリズムよく話をすることができた。心から「ご静聴ありがとうございました!」とご挨拶して退席した。
私のような無名の研究者であっても,今日のような経験をさせていただけると自信がもてるし,また私なりの講演の質を高めていこうと素直に前向きになれる。
研究者として,講演者として,そしてたくさんの土地を訪ねたい遊び人として,出張講演はとても魅力的なのだ。
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