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2009年7月13日 (月)

教員の運転と引率

 大分の私立高校の野球部副部長をしていた26歳の教員が,「自動車運転過失致死傷」容疑で送検された。甲子園を目指す高校球児たちの地方大会開会式に向かう途中での悲しい事故が原因だ。この事故で息子を亡くした母親は,「息子も甲子園を目指して頑張っていた。生徒たちに責任はなく,彼らの夢を実現させてほしい」と出場を訴え,大分の高野連も大会日程を変更する特別措置を決め,この高校も大会参加を決意した。亡くなられた16歳の吉川君の冥福を心からお祈りしたい。

 私自身の経験と重ね合わせて考えるとき,私は事故を起こした教員を気の毒に思ってしまう。連日の部活指導と部員たちのチームワークや大会に臨む士気を高める精神的なサポートをしつつ,学期末の成績処理や校務分掌に忙殺されていたはずだ。野球部員77人全員が寮生活をしていた学校だけに,教員と生徒たちとの関係も一般の人にはわからない絆で繋がっていたに違いない。雨の中スピードを出し過ぎていたとされているが,前を走っていたレギュラー組のバスと一緒に走っていたのだから,無謀運転していたとは考えにくい。年齢的にも生徒と近く,若さ故の無理の積み重ねが事故にも影響を与えていたように推測できる。この若い教員が重すぎる自責の念を一生かかえて生きていくことになる。彼の今後が心配でならない。

 私の昔の同僚の中にも,部活動での生徒引率を主目的にワゴン車を購入した教員が少なくない。生徒を乗せないまでも,用具の多くを自分の車に積み込んで遠征先へ向かう教員はむしろ多数派だ。学園でマイクロバスを保有していて専属の運転手を確保できる学校なんてそう多くはない。休日を返上して引率に運転を引き受ける教員にかかる負担は深刻だと考えるべきだ。

 我が家では3番目の子どもが生まれた際に,祖父母も家族と一緒に乗れるサイズのワゴン車に買い換えたが,今では毎年学生を乗せて,日本各地のユニークな学校の参観に引率する際に重宝している。学生の経済的負担や移動時間の短縮等を考えて,私の運転で出かけるのがベストだから今後も車で引率することはやめられない。しかし,こうした事故のニュースを聞くたびに,私自身も運転前のコンディションは十分に留意するよう心がけたいと思うし,500キロを超えるような長距離運転は避けたいと思うこの頃だ。

 でも,9月末には長野から和歌山経由高松まで,また学生たちを車に乗せて移動する。学生も経済的に厳しい現実を抱えている。しかし,学生時代にこそ貴重な経験をさせてあげあたいし,広い視野から教育の現実を捉えてほしい…。危険と隣り合わせということを熟知していながらも,全国の部活動等の関係教員も,同じような思いで,引率運転をやめられないでいるのだ。過失致死で運転手を送検したところで,根本的な問題解決にはならない構造がある。

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