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2009年7月20日 (月)

ピンク・スリップと奇策

 財政難にあえぐアメリカのカリフォルニア州教育当局は,今年3月に2万6千人にも及ぶ公立学校の教職員に「ピンクスリップ」と呼ばれる解雇予告を手渡した。

 俳優シュワルツネッガーが州知事になる頃から好景気に支えられていたカリフォルニアは、今や失業率が10%を超え、民間労働者にとどまらず教職員の職までが危うくなっている。3月中旬、州内各地の教育当局から一斉にピンクスリップが発行されたため,13日の金曜日には、学校側が抗議の意味を込めてピンク色の服を子どもたちに着てくるよう呼びかけた「ピンク・フライデー」が各地で催された。それでも,ある小学校では,40人の教職員中14人がピンクスリップを受け取ったという。

 直面する財政危機により,カリフォルニア州全体の小中学校では,来年度80億ドル(7800億円)以上の削減を迫られているという。オバマ政権による景気対策のための一時交付金だけでは事態の好転も期待できないため,地元の教育長も今回ばかりは一定数の解雇に踏み切らざるを得ないとの姿勢を示している。

 こうした事態に際して,同州のある議員グループからは予算確保のための驚くべき法案が提出されている。なんと大麻を合法化してその売買に税金をかけるというものだ。現状ではカリフォルニアでも大麻は禁止されているものの,日本のように厳しい取り締まりはなされていないためか,若者を中心に多くの人の間で不法に取り扱われている実態もあるらしい。ある試算では,削減を迫られている教育予算分を遙かに上回る税収になるという。目的のためには手段を選ばないということか。

 この法案が議会を通るとは思えないが,大麻の売買による税収からまわされた予算で教育環境を充実させるという矛盾を冷静に考える必要があるように思う。目を国内に転じて,解散総選挙という状況を迎えた日本の政治が,選挙向けでしかない「その場しのぎ」の公約で,長期的ビジョンを必要とする教育・福祉・医療を悪化させないことを切に祈りたい。

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